「付き合ってない」
私は平静を装って答える。
コーヒーの黒のなかで、氷がころころ踊っている。
「じゃー幼なじみ継続中?」
「うん。高校も一緒だし」
「すげーなーお前らは」
そう呟かれて、私はストローで氷をかき回す手を止めた。
「なにがすごいの?」
「俺らの歳にもなって幼なじみなんて、もはや天然記念物よ?」
「え、なんで?」
「少女漫画でもない限り、幼なじみなんてもんが生き残ることなんてないよ」
「だってマンション、隣だし…」
「隣だろうとなんだろうと、思春期超えりゃなんとなく距離できるもんだろ」
山村くんの言いたいことは分かった。
おおむね、私と同じ考えだ。たぶん、一般的な。
「こんなに距離が近いのは、高校までだと思う、私も」
「え?そうなん?」
「幼なじみってそういうものだってことくらい、分かってるし」
コーヒーを一口飲む。
おいしい…。
JD万里加がいれたのかな、これ。


