「本当はちゃんと口で言いたいんだけど、きっとうまく言えないから……」

雪はそう言った後、踊り始める。数多くの恋愛ソングの中から選んだのは「病名恋ワズライ」だ。一番最初の歌詞から「恋」というワードが入っている。


片想いは楽しいって聞いたけどそんなの嘘
辛くて涙ばかりだ
でもね好きって気づけた時は嬉しかったんだ


前をまっすぐ見つめながら、雪は踊り続ける。互いの視線が絡み合い、頬が赤く染まっていく。

音楽が止んだ後、教室には静寂が戻る。魔法の時間は終わり、時間が一秒ずつまた動き出す。雪は緊張しながら口を開く。

「えっと……えっと……さっきのダンスや歌が、私の気持ちです……。私……私……」

恥ずかしくて俯いてしまう。その時、グイッと雪の手が引かれた。その刹那、ふわりと雪は前の腕の中に閉じ込められる。抱き締められていると雪が気付くまでに時間が少しかかった。

「えっ!?ぜ、前くん!?」