『おばあちゃんの贈り物』-許嫁(いいなずけ)とか意味わかんない-

「あーあ。ついに降ってきたか」
 あいつ、カサ持っていったのかな。
(あたしったら)
 そんな心配は沙月(さつき)がすればいい。

 ヘアブラシにからんだ毛をゴミ箱に捨てて。
 あきらめたドライヤーは棚にもどす。
 ぽたぽた髪から垂れるしずくでぬれてしまったパジャマの胸のあたりを気にしていたら、玄関のドアが開く音がした。
「うそ。ゾンビだ」
 今まで沙月といっしょだったんだと思ったら、突然また胸がしめつけられて。
 のろのろとしか動かなかった身体がバネみたいに動いて、洗面所の灯りを消していた。
 会いたくない。
「…………」
 息をひそめて足音が部屋に入るのを待つ。
 

 とんとんとん。
(やだ。うそ)
 足音はそのままこっちにむかってきている?
(どうしよう!)