Lesson7.ジョーダンから恋

「うっわぁ」
 本当に富士山が見える。
 お皿にだしたミルクプリンみたいに、雪で白い富士山。
 45階の展望室まで、ツバを飲みこみながらエレベーターに乗ってきた甲斐(かい)が、あったってもんだ。
 202メートル?
 考えてみたら、こんな高い所にのぼったのは、小学校の遠足で東京タワーに行って以来。
「ねえねえ。富士山てばさぁ、7月まで雪があるって本当なんだね」
 横を向いたらだれもいなかった。
 右も。左も。
「うそ」
 ふり向いたらそこで、沙月(さつき)とゾンビが楽しそうに笑っていた。
「あ、お春ぅ。(のぞみ)さんてW大なんですって? すごいじゃないのぉ」
 望…さん?
 びっくり。
「お春ってば、望さんのバンドのライヴに行ったんなら、行ったって。そう言ってくれればいいのにぃ」
 言ってどうするのよ。
 だいいちそんなこと、ちっとも聞かなかったじゃないの。
「今ね、今度のライヴに誘ってくださいってお願いしてるのよ。お春もいっしょにお願いしてえ」
 はぃい?
 いったいどこまでなにを話したのか。
 ひそめた(まゆ)で問いかけるとゾンビも眉を上げて答えた。
「達也さんといっしょの春加(はるか)を見たって言うから、事情を話したんだけど。言うんじゃなかったかな?」
「…………」
 かわいぶって首をかしげたって、あたしは知らないわよ。
 にらみつけるとゾンビがわざとらしく肩をすくめて、髪に指を差した。
 ワックスでツンツンにとがらせていない、さらさらの髪。
 どちらのゾンビも知っている女の子、たくさんいるのかな?

 どくん。

 ふいに心臓が弾んだ理由なんてわからないけど。
「春加も言ってあげてよ」
「…………っ」
 な…にをよ。
 やめて。
 今あたしに話しかけないで。

 なんか…おかしい。
 あたし、おかしい?