『おばあちゃんの贈り物』-許嫁(いいなずけ)とか意味わかんない-

「ねえ、どのひと?」
 沙月(さつき)はダサイ場所だっていうけど。
 定番の待ちあわせ場所らしく、広場は人待ち顔の男女でいっぱい。
「せめて、あのくらいじゃなきゃ、やーよ」
 沙月が指さしたのは、栗色の髪のグレーの制服の男の子。
 たしかにちょっとカッコイイけど。
 あんな、靴のかかとをふんで、ガムをくちゃくちゃしている子より、ずーっとゾンビのほうがカッコイイ。
「ぎょえぇぇぇ」
「やっ。きゅうになに? おどかさないでよ」
「ご、めん」
 い…今、思ったことは、なにかのまちがいですっ!
 びっくりしたぁぁぁ。

「ねえ、どのひとよ?」
 沙月に催促されて、あらためてまわりをきょろきょろ。
 ジーパン。パーカー。ジーパン。パーカー。
(遅刻か? あのばかッ)
「あっ…」
 そんなのじゃ、見つかるわけなかったみたい。
 ゾンビは、きちんとグレーのジャケットスーツを着て、ピカピカの黒いローファーをはいて。
 渋いえんじ色のトートバッグを無造作に肩から下げて、カバーをはずした文庫本を読んでいた。