Lesson6.知らんわ ほっとけ

 6月1日。晴れ。
 中間テストがおわって今日から夏服。
 テストがおわったら、ゾンビと街に遊びに行く約束をしたから、ちょびっと変身用に、白い麻のカーディガンとグローリップを持ってきた。

 ライブからの帰り道、電車から見える建物をいちいち説明する係にされて。
『そんなにめずらしかったら、ひと駅ひと駅、降りて歩いてみたらいいじゃないの』と反発したら『聞けるやつがおるで聞いとるだけで、おれ、家で楽器さわっとれば幸せなタイプやでね』と、肩をすくめられちゃって。
 ぴこーん、とひらめいたあたしは天才。
『あたし、すごーく大きな、なんでも売ってる楽器屋さんも、本屋さんも知ってるよ』
 ゾンビはイチコロだった。
 そして、お父さんお母さんも。

『おじさん、おれ、専門書を扱ってる本屋に行きたいんですけど』
 ゾンビがまず選んだのが本屋さんのほうだったのは、ちょっと意外だったけど、お父さんの反応で、ああそういうことね、と納得。
 ゾンビと同じ学部の卒業で、ゾンビと政治経済の話ができるとわかったら食卓で新聞を読まなくなったお父さん撃沈。
 結婚以来初めて朝の食卓でお父さんの顔を見た――それってどうなの?――と、超絶ごきげんなお母さんに
春加(はるか)ちゃん、あなた、ご案内してさしあげたら?』
 そう言わせるのなんか簡単だった。
 策士め。