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「春加ちゃんかな?」
指定されたのは、あたしでも知っている有名な待ち合わせ場所で。
学校の友だちにはとても言えないような、センスのないチョイスだとは思ったけど、ありがたかったのも事実。
東京なんてせまいから、新宿、原宿、お台場、池袋。学校帰りに東西南北どこにでもすぐ行けるけど。
お母さんやシスターに「だめ」と言われた場所に行くのは、やっぱり少しこわいし。
おしゃれな場所はテレビでしか知らないんだもん。
「ほれ」
声をかけてきたひとがあたしの耳に当ててきたケータイから
「春加?」ゾンビの声がした。
「無事に合流できたみたいやな」
「うん。…ちょっと驚いたけど」
素直に言うとゾンビが笑った。
「いいひとやで。トイレの場所でもなんでも恥ずかしがらんと聞くように」
「な…」
思わずケータイから顔を離すと、目の前のお兄さんが、がはがはと豪快に笑った。
「望、なんやって? ――もしもーし」
本当にもう!
デリカシーってやつがないのか、あいつは。
まぁ、おかげでちょっと落ち着いた。
なにしろ目の前にいるのは、いつもだったら半径10メートルには近づかない、見るからにアブナイお兄さんだ。
全身黒の革ずくめで鎖ジャラジャラ。短い金髪はツンツンで、おまけに夕方だっていうのに真っ黒のサングラス。
「…したら、預からしてまうわ。うん。またあとで」
ケータイをお尻のポケットにしまったお兄さんが、こっそりジロジロ見るっていう複雑なことをしていたあたしに、こくっと首を傾げる。
「ビビっとう!?」
「……っ……」
ビビるでしょ、ふつう。
素直にうなずいたあたしにまた豪快に笑って、お兄さんがサングラスをはずした。
サングラスをはずしても、まだ半径5メートル内には入らないでほしい異世界人。
「あ、わし、マネージャーの林や。今日はタッチャン春加ちゃんでいこまい。オーケェ?」
「お…オーケー」
ゾンビってば、いったい、どんな世界に住んでるの?



