『おばあちゃんの贈り物』-許嫁(いいなずけ)とか意味わかんない-

「…それ、フォークギター?」
「ん? …ま、そんなようなもの」
 ギターの種類なんてわからないし、ピアノの一件以来、あたしはこのての話はゾンビにはかなわないって思ってるし。
 ゾンビは聞けば教えてくれるけど、教えたがりじゃないみたいだから、いまも黙ってギターの弦をあれこれいじっている。
「よし」
 ぽろーん。
 小さいけれど澄んだ深い音。
「うわー。本物のギターだぁ」
「本物て……」
 くすっとあたしを見て笑ったゾンビが目をつぶる。
(ああ……)
 目を閉じてくれているから、あたしの目は素直にギターを弾くゾンビに吸い付いた。

 ゾンビが初めて“音楽”をあたしに聴かせてくれている。
「これ、知ってる」
「そうか……」
 はーぅめに ろーぅず ますた……
 心の中で歌いながらあたしも目を閉じた。
「天国のおばあちゃんにも聞こえるかなぁ」
 つぶやいたら、
春加(はるか)が望めば…聞こえるやろ」
 ゾンビがぼそっと答えてくれて。
「うん……」

 おばあちゃん。
 あたしが遺言(ゆいごん)を守らないと悲しいですか?
 だけど、ね。
 遺言なんてきっと、あっという間に忘れられちゃうよ。
 もう、おばあちゃんを忘れてるおとなたちなら。

 ギターの音がリフレイン。
 
 答えはいつも風のなかにある、だっけ。
 それとも、風のうわさのなかにある?
「…………」
 そんなのどうでもいいか。
(ああ……)
 いつもこんなふうに黙ってギターを弾いてくれたらいいのにな。
 そうしたら、ちょっぴり仲良くしてあげてもいい。
(だって……)
 親戚なんだし。

 気づいたらハミングしていた。
 ハッと口を手でふさいだら、ゾンビが目で「続けて」って言うから。
 素直に続けてしまえるのも、恥ずかしくないのも、親戚だからでしょ?
 ふん。ふふ。ふふふん。