『おばあちゃんの贈り物』-許嫁(いいなずけ)とか意味わかんない-

「なんやろなぁ。さっきまで、おれと口きくのもいやそうやったに」
「だって!」
「だって――?」
 首を傾げられても困るけど。
「いくらおばあちゃんの遺言(ゆいごん)だって、その…、その気になるとか、ありえないんだから。だったら今までどおり、ただの親戚じゃん」
 ゾンビがカシーンと弦をはじいてギターにうつむく。
「だーから。そう言ったやないか」
 その自分だけおとなぶった落ち着いた態度が気にいらないけど。
「そしたらさ」
「うん」
 そんなふうに返事をしてくれると落ちつくから――許す。
「やっぱ、仲良くしなくちゃね」
「…………」
 子どもじみた言いかたになったのは自覚したから、またからかわれるかな、と身構えたのに。
 ゾンビはギターにうつむいている。
 指が動くとカシャカシャ音がするけど、それはどうしても楽器の音には聞こえなくて。
 なにを弾いているのか、ふと気になった。
「ねぇ。それ、ふつうの音にならないの?」
 イヤフォンは耳に悪いって言ったけど、ゾンビが家に持ちこんできた楽器はみんな、ヘッドフォンをつけたひとにしか聞こえない仕組みらしく、あたしは一度もゾンビの演奏を聴いたことがない。
 伯母さんは、ゾンビが音楽の仕事をしていると言っていたけど、楽器でする仕事ってなんなのか、あたしには想像もつかないし。
「――ほうやな。PPMくらいなら……」
 のっそり立ち上がったゾンビが楽器部屋に向かった。
(やった――!)