『おばあちゃんの贈り物』-許嫁(いいなずけ)とか意味わかんない-

 
 元気になったら(のど)が渇いたと思う前向きなあたし。
「ねえ、またなにか借りていい?」
「――ん?」
 ゾンビの返事も待たずに本棚の前に移動。
 引っ越してきたときには空っぽだった棚には着実に本が増えている。
「本当に不思議。こんなにいつ読むの?」
「ひまやん、電車のなか」
「へー、音楽とか聴く派なのかと思った」
「イヤフォンは耳に負担かかるで。使いたないんや」
「…………」
 そうなのね。知らなかった。
 でも音楽とか楽器とか、絶対にゾンビの得意ジャンルだから興味なんてないもんね。
「ね。この推理小説、もう読み終わった? 借りていい?」
「いいよ。お礼はデートでええわ」
「はぁああ?」
 んもう。
「そういう冗談はもう笑えないんだよ。ぶっとばすよ」
「どこでそんな乱暴な言葉、おぼえてくるんや。イナカ者の買い物に、つきあってまおぅ思っただけやわ」
「買い物くらい、もうひとりで行けるでしょ」
「ふーん。シャツの1枚くらい、買ってやるのになぁ」
 え。
 やだ、太っ腹。
「なに? どこに行きたいの? いつ?」
「…ぷ」ゾンビが吹きだした。
「あはははははは」
 ギターの上に身体を折り曲げて大笑い。