『おばあちゃんの贈り物』-許嫁(いいなずけ)とか意味わかんない-

「やめてよ、もう。セットに何時間かか…」
 そこで恥ずかしくなって。
 そっぽを向いたあたしの頭で、まだゾンビの手が動く。
「かわええのぉ」
「…………!」
 子ども扱いに、キッとにらんだら両手をバンザイ。
「ブレイク。達也さんに電話せな」
「…………」
 きたない。


春加(はるか)ちゃん、たのむぞぉぉぉ』って。
 電話口で泣きそうになっていたタッチャンの声がリフレイン。
 タッチャンの心配どおり、新幹線に乗ったとたん、夜行バスで帰ってきて、今晩のライブのためにとんぼ返りのゾンビは『平気、平気。全然眠たない』と言いながら爆睡した。
 おかげであたしは、中等部の修学旅行のときより緊張して。
(眠くない眠くない眠くない)
 あたしが眠ったら博多まで行っちゃう。
 アブナイひとみたいに、ぶつぶつ唱えるはめになった。
 でも護衛役が務まったのは帰りに降りることになる名古屋まで。
 流れる景色の早さと2時間も爆睡しているゾンビにそわそわして、京都でゾンビをたたきおこしてしまった。
「んん? もう着いたぁ?」と伸びをするゾンビの顔を見て、大発見。
 寝不足でも、寝起きでも、しぱしぱと長いまつ毛を震わせるゾンビのまぶたは、ちっともはれぼったくなんかない。
(やっぱり……)
 あのときは――ずいぶん泣いていたんだね。