お盆の集まりに顔を見せなかったゾンビは親戚のおばさんたちには叱られもしなかった。
 お墓のあるお寺に集まったのはおじさんおばさんと小さい子たちだけで。
 あたしは当然のように、地元のかたたちへの対応に社長として忙しい恵子ちゃんとお父さんを横目に、お母さんとふたり、座布団やお茶菓子を出す現場仕事を押しつけられたのに。
(のぞみ)くんは、そろそろテレビにも出るんやないが?』
『ああ。うちの子がネットで買いよるよ、望くんの歌』
 お茶菓子を補給しながら、耳をそばだててしまう話題。

 バンドで最年少のゾンビは、ほかのメンバーには申し訳ないけど、大学は卒業すると言っていた。
 でも、就活タイムに入ったベースさんのために、今年は勝負したいんだって。
 お金稼ぎと好きなこと。
 それが重なるひとをプロと呼ぶなら、あたしでも知っているようなバンドの曲の譜面起こしでお金を稼いでいるゾンビは、ちゃんとプロとしてがんばっていると思うけど。
 ひとの作った曲を演奏できるようにまとめることと、自分の作った曲をいろいろなひとに聴いてもらうことは、もちろんちがうものね。
 学生の自分はまだ、逃げ道を残しているアマチュアだってゾンビが言うのはよくわかる。
 でもアマチュアだから…、学生だから…って、言い訳をしてバンドのみんなの足は引っ張れないって。
 だから――…
春加(はるか)を優先しないのは、許してちょーせ』
 そう言われたのは、うれしかった。

 あたしにとって[みんな]はクラスのみんなと(うち)のみんな。
 クラスのみんなのためにがんばることなんて、今まで文化祭くらいしか経験がないし。
 お父さんやお母さんのためにがんばったことなんて、実は一度もない。
 だから、すごいなって。
 それって、自分にできることがある、ってことでしょう?
 あたしも望くんみたいになりたいな。
 なれるかな。
 あたしにできることを、ちゃんと見つけたい。
 おばあちゃんの遺言(ゆいごん)だから、望くんの許嫁(いいなずけ)になれたって、ほかの女の子に思われないように。
 あたしを……見つけたい。