「そんなこと言わんと教えぇや。どのくらい? もう一度ハグされてもいいわぁ思うくらい?」
「…………っ」
 その言いかたがふざけていて。
「ぶっとばす」
 反撃したのに唇が震えてしまう。
(笑ったら、だめ!)
 唇をかんでこらえても、顔がひくひくするあたしに気づいたのか、ゾンビがぐいっと顔をよせてきた。
「ぅわっ」
 のけぞるあたしにゾンビが笑う。
「あー。それともいっそ、思いきって。――キスされてもいいくらい?」
「ゃっ!」
 なに言い出すの?
「それ以上ふざけ…」

(えっ)

 当たっている。
 くちびるに。
 柔らかいものが!

(うっ…、そぉぉぉぉぉぉ!?)

 いまの…、いまの……。
 指先で温もりのあとを確かめるあたしの目は、別人みたいに真剣な瞳のゾンビを見ていた。
「謝らんでね。長いことひとを(うたが)っとった罰や」
「ぅそ」
 うそうそうそうそ。
 本当に?
 あたし、キス…されちゃった?