きゅうにまぶしいくらい明るくなった洗面所で、ノーブラの胸が、ゾンビの冷たいむきだしの腕にふれて。
 瞬間湯沸器みたいに、身体中にボッと火がついた。
 半分乾かしただけのくしゃくしゃの髪も、真っ赤な顔も、ぶかぶかのパジャマの下の無防備な胸も。
 みんな、みんな、ゾンビの視線からかくしたくて。
 壁におでこをつけて、ゾンビに背中を向ける。
 聞こえるのはドコドコ太鼓を打っているみたいな心臓の音と、サーサーいう雨の音だけ。

「なんで先に帰ったんや……」
 ばさっとなにかが落ちる音がして。
 びくっと首をひねって音のしたほうを見ると、お風呂場のタイルの上で、ゾンビのぬれたシャツが、まるまっていた。
「そんなこと、どうでもいいでしょ?」
 声が…ふるえる。
「おまえがああいうことするとなぁ、おれがあとで、めっちゃ冷やかされるんやぞ」
「だったら!」
 お願いだから、
「だったら、あたしなんか…誘わないで」

 どうせ、迷惑しか、かけられないんだ、あたしは。

沙月(さつき)だけ呼べばいいでしょ?」

 どうせ、おまけなんだ、あたしは。

 うなじにぽたっ…っと冷たいしずくが落ちた。
 首筋から背中までがブルリとふるえる。