「あっ、そうだった!」
「なに?いきなりどうしたの?」
「そういえば、ここで待ってろって翔ちゃんに言われてたの。傘持って迎えに来るはずなんだよね」
ちょうど大通りに出る前の小さな本屋さんの前を通りかかったから、慌ててとって付けた嘘をついた。
「いいの?なら俺入れてもらっていい?」
「ほんとに宮辺来るんだよね?」
なっちゃんが疑っている目をしてる。
「うん、来る!くるくる!」
なっちゃんの鋭い目をうまくかわす。
「ほんとにほんと?」
「うん、翔ちゃんは嘘つかないもん」
私はたった今、嘘をついていますが。
「……なら大丈夫か」
そう言って笑顔と私を残してふたりは行ってしまった。



