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部屋で黙々と宿題にとりかかる。
でも頭に入ってくるはずがない。
長文も自分のこの気持ちも全然意味がわかんない。
翔ちゃんに宿題を見せてもらおうと思ってたのになんでこんなことになっちゃってんだろ。
シャーペンを放り出してずっと迷っていたことに決着をつけようと、なっちゃんに電話してみた。
「ねぇ、なっちゃん」
「何?宿題なら教えないよ?」
一言めがそれって、なっちゃんは、私をなんだと思ってんだ。
「いや、宿題じゃなくて……わからないのは胸の辺りで小鳥ちゃんが内緒バナシしてるみたいなこの気持ちなんだよね」
「なにそれ、詩人か!金子みすゞか!」
得意のインテリ突っ込みでゲラゲラ楽しそうに笑うなっちゃんがうらやましい。
私もできればこの気持ちを笑ってごまかしたい。
「ものすごく真剣だよ」
柄にもなくため息をついたらそれがなっちゃんにも聞こえたらしくて、電話越しの空気がピンと張りつめた。



