「姉貴にバレないようにしないと……神がこんなに近くにいるってわかったらあの人発狂しかねないから」


「そうだね」


いつもよりもっと、翔ちゃんの横顔に見とれてしまう。


「実はルカ君を最初に見たときから翔ちゃんに似てるなってずっと思ってたんだ」


「ふーんそうなんだ」


翔ちゃんの優しい相槌がすき。


「わたしルカ君の黒髪ツヤっツヤに塗ったんだ。目にはキラキラ入れる係だったの。翔ちゃんがモデルだから気合い入っちゃった」


漫画を見ながら早く翔ちゃんに説明したい。伝えたいことがいっぱいある。


「あ、そうだ。キラキラっていえばこれ」


ポケットから大事そうに取り出したものを、翔ちゃんはその視線の先で泳がせた。


「ほら、これ見て?」


「……それって」


それはずっと前に私が商店街の七夕飾りに願いをかけた短冊だった。黄色の和紙が夜の柔らかな風にふわふわ揺れてる。


それは、どんな子かも知らない翔ちゃんの生徒さんにやきもちを妬いてしまったあの日、願いが届くように気持ちを込めて私が書いたものだった。


一度濡れたのか、かさかさに乾いた跡が残ってシワがよっているし、字もところどころかすんでる。


『翔ちゃんのそばに
ずっといられますように。平澤美緒』


翔ちゃんにその願い事を見られるのが、ちょっとだけ照れくさい。