なのにもっとそばに行きたいなって、欲ばりになって……ちょっとだけ肩に頬を寄せてみた。


それでも足りなくて、そっと腕にしがみついてみた。


なんか違うぞと、さりげなく手を腰に回してみたり、横顔をじーっとみつめてみたり。


傘の柄を握る翔ちゃんの手に、思いきって自分の両手を重ねてみたりした。


思い付く限りのことをしてみたけれど、好きって気持ちはおさまるどころかどんどん加速していった。
こういうの、なんて呼んだらいいんだろう。


「ちょっと落ちつけって」


ずっとされるがままでいてくれた翔ちゃんも、さすがに呆れて笑いだしてしまった。


「だって、今日はわたしの命日かもしれないと思ったら悔いを残しちゃいけないと思って」


死亡診断書の死因の欄には、ちゃんとキュンの過剰摂取によるキュン死に、って書いてくださいお医者さん。


「なに言ってんの、逆だろ。誕生日じゃん」


「……覚えててくれたんだ」


「なんのために俺がバイト頑張ってたか、全然わかってないのな」


「……そうだったの?」


私ってものすごく幸せ者……でも、17歳になる前に、やらなきゃいけないことがある。


「ね、仲直りしたことを岡崎君に報告してもいい?」


「また岡崎?」


露骨に嫌そうな顔をするのがなんかたまらなく愛おしい。でもそれとは別に、私と同じように悩んでくれた岡崎君と華世ちゃんを早く安心させたい。


「岡崎君と華世ちゃんは、自分の事そっちのけで心配してくれたんだ」


翔ちゃんは黙って話の続きを待ってくれた。