でも、踏みとどまった。
自分の気持ちばっか押し付けるのはもうやめる。


「……止めろよ。歯止め効かなくなるぞ」

「そんなこと……言わないでよ」


ふたりとも、顔が赤くなる。
余裕がなくなる。


「……煽ってる?」

「そ、そんなんじゃないけど」

「じゃあ、すれ違ってた時の分取り戻すけどいいよね?」


聞いときながら、問答無用。
さっきの決意はなし。
もう返事する間も与えてやんない。


「オオカミになっても許してな」


今はただ俺についてきてほしい。だってもう止められそうにないんだ。


理性をなくすってこういうことなんだって、初めて知った。


自制心はちゃんとあると思ってた。
でも違った。


愛おしさも、全部を自分だけのものにしたいって欲望も、みっともないくらいに歯止めが効かない。


美緒もそうならいいのに。両想いってそういうもんじゃないの?俺だけが想ってるなんていやだ。


せつない気持ちのままそっと唇を離したら
美緒がものすごい息継ぎをしたから、思わず笑ってしまった。