これ。橘之宮ちぇりこの漫画に出てくる奴だ。ルカって名前の。
そのルカが決まり悪そうに後ろ手に頭を掻いてる絵が出来上がって、休まずその周りに吹き出しが幾つか描き込まれた。
その中に岡崎が文字を書き込んでいく。
『バイト中、服にインクこぼしました』
『替えの服があれしかなかった。もちろん未使用!』
『あの岡崎サンダルはスタッフ専用だよ』
『勘違いさせてごめんね』
『断じて抱いてません!』
『尾崎華世さんもずっと一緒でした』
『俺の素性もうわかったよね?』
『あ、コミック買ってね♪』
最後に、岡崎がまた何か書き込んだ。それが写し出される。
そこには『橘之宮ちぇりこは覆面漫画家を辞める決心はついています』って書いてあった。
美緒は唇を噛みしめて、最後まで視線を画面から動かさなかった。
「翔ちゃん……」
すがるような、苦しそうな目。
「……ちゃんと、見たは見た」
でも、今のはなんだったのか。
頭のなかを少し整理しないと。



