「翔ちゃんごめんなさい」
うちに来てすぐ、玄関先で下を向いたまま美緒は頭を深く下げた。
目も合わせてくれない。
なんだ、やっぱ謝るんだ。
やっと会えたと思ったのに、もうさよならみたいな気がしてくる。
ずっと涙目なのが気になる。
少し痩せた気がする。
「ちゃんと話聞かせてくれる?」
落ち着け、俺。
美緒の口から岡崎というワードを聞いてもうろたえないこと。
取り乱さないこと。
こいつの気持ちをいちばんに尊重すること。
「岡崎も、説明するつもりなんだと思う」
そう言いながら、俺はリビングのテーブルに携帯をそっと置いた。
「一緒に見ろって動画が来たんだ。口じゃ言えないからそういう回りくどいことすんだろ」
何が出てきても動揺したくないけれど、その自信はまるでなかった。
「岡崎にもう手を出されてる」って言った姉ちゃんの言葉が頭の中でクラクラ響く。



