幼稚園の頃から、どうしようもなく不器用でのろま。バカにされても他人の悪意に全然気づかないし、天然で純真で人を疑うってことを知らない。


騙されたりからかわれたりしても、いつも笑ってた。


「大丈夫だから。気にすんな。ときどきは俺んとこに来て泣いてよし!」って冗談で言ったらほんとに大声で泣かれて焦ったこともあった。


ほんとは泣き虫だし、傷つきやすい。
優しくて、脆いってことを知ってた。


だから苛められたり、困ったりしてないか本当はいつも心配だった。


無理して笑ったりしてないか、つきまとってくるうざいヤツはいないか。


でも俺なんてもう必要ないか。好きな奴いたりして、って斜に構えてみたり。


ほんとはそばに置いておきたかったのに、中途半端でチャラチャラしてた自分が美緒を傷付けそうで怖かった。


独り占めしたかったくせに、触れたら壊してしまいそうな気がした。


あの頃の俺には守り方も触れ方もわからなかったんだ。


だから手放そうと決めたのに、美緒は俺の後ろをついてきた。


まるで逃がした小鳥が、
なついて戻ってくるように。