「うまく言えないんだけど、思うように仕事ができなくて去るしかなかったスタッフさんたちも、先生のせいだなんて思ってる人はひとりもいないんじゃないかな」
「ありがとう、そうかもしれないけど、理想論ばかりじゃ大人社会は回らないんだ」
ううん、違う。
違うの岡崎君。
理想論じゃなくて、私は今君の人柄の話をしたいの。
「お仕事のことは……正直全然わかんない。でもあの中にいれば、空気感や雰囲気でわかることだってあるんだよ。みんな岡崎君を慕って尊敬して、どこまでもひたむきなその姿勢についていきたいって思ってるはず。でなきゃ、前の人たちだって、急で一見理不尽な解雇を受け入れたりしないでしょ?」
まくしたてたら、岡崎君は何かを思い出したようで、やっとこっちを見てくれた。
「それってほとぼりが冷めたら呼び戻してくれるって信じてるからじゃないの?
岡崎君だって学校辞めてそうするつもりなんでしょう?むしろそうしたいから中退しなきゃと焦ってるんでしょう?」
伝わって。伝わって、私の気持ち。
「ねぇ、なんで他人のことをそんなふうに考えることができるの?」
岡崎君の澄んだ目が、私に問いかける。
「岡崎君がチームちぇりこを大事に思ってるのとおんなじだよ」
にっこり笑って彼を見つめた。
岡崎君は大切な仲間、友達だよ。
「柏木さん、岡崎君が目薬を忘れていったことに気付いてすごい慌ててた。自分のことみたいに」
結構な勢いで捲し立てたら、息が切れるどころか感極まって泣きそうになってしまった。
「嫌いだった自分の手が今では誇りで自慢なんでしょう?それなのに、そのきっかけをくれた奥寺さんを忘れようと努力しなきゃならないなんて、そんなの変じゃないかな」



