改札に背を向けて、雑居ビルが建ち並ぶ大通りへ走ると塾のまえに岡崎君がいた。
「岡崎君〜!忘れ物してるよ〜!」
私の声に振り返ったけど、目を細めてる。
何も見えてません、って顔。
あんな悪い目付きで奥寺さんとこ行ったら彼女逃げちゃうよ。
「あれっ、平澤さん?どうしたの」
私が後を追っかけてくるなんて予想もしなかった、という絵に描いたようなぽかん顔で岡崎君は首をかしげた。
「岡崎君足が早すぎるよ。はい、これ」
人よりだいぶ足の遅い私は、どうにか息を整えながら、目薬を渡した。
「うわ、ありがとう。買わなきゃやばいと思ってたとこだった」
「大事なんでしょ、柏木さんが慌ててたもん。あと、すごく目付き悪かったよ?」
岡崎君のほんわか癒しオーラが台無しだ。
「ごめんごめん。でも平澤さんもひどいよ、普通その格好のまま来る?」
岡崎君が私を見て吹き出したから自分の姿をよくよく見たら、体操服姿のまんまだった。
「うわ、やっちゃった!」
これで大通りを駆け抜けてきたなんて!猪突猛進な自分に呆れて笑うしかない。



