「今ならまだ近くにいるはずだから、わたしちょっと見てきます」
目薬を受け取ると、すぐに岡崎君の後を追いかけた。
「あっ、ちょっ……美緒ちゃん!」
「渡したらすぐ戻りまーす!」
華世ちゃんが呼び止める声がしたけど、仕方なく振り切った。
だって、きっと岡崎君はもうこの辺にはいない。追い付けないかもしれないと思ったから。
実は、怪しいよね、って数日前から華世ちゃんと話してたんだ。
彼が出かけるのはいつもこの時間帯だし、何かあるとは思ってた。
そういう経緯もあってすぐ後を追ったのに、どんだけ早いのよーって弱音を吐きたくなるほどに、岡崎君はこの辺りからすっかり姿を消していた。
女子の勘というもので、奥寺さん絡みで出掛けたんだとすれば目的地は改札の方、つまり塾の近く。
彼女の塾終わりが確かこのくらいの時間だったはず。
駅前まで走って、息を切らしたまま岡崎君を探した。



