「あの……ほんとに体操服の着心地サイコーなんだけど」
岡崎君の体操服に着替えて出ていくと、華世ちゃんはお腹を抱えて大笑いしてしまった。
「やだもー美緒ちゃんたらやだもーぉ」
「そこまで笑う?」
「だってー、まるで3年2組の岡崎なんだもん」
よほどツボだったのか、言ってることがかなりの意味不明。
この仕事場の空気が弛緩することなんてめったにないのに、服一枚着替えただけで、こんなにゆるゆるになるのね。
でも次の瞬間「あっ」と、柏木さんの短い悲鳴が響いた。
「どうしたんですか?」
「先生目薬忘れてる!」
華世ちゃんと顔を見合わせた。
ぽかーん。
どういう意味かな?
「これがないと仕事のあとはしばらく目が開かなくなるのに」
柏木さんが慌てて机のそれを手に取った。
「生まれたての仔猫みたいなやつだね、岡崎って」
華世ちゃんはちょっと苦笑してたけど、きっとそれって職業柄のドライアイだよ。かなりのピンチだよね。



