帰りたくないと言いたい。
でも言えない。
気持ちを伝えたいあまり不機嫌にうつむいてしまう。


足が前にでない。
翔ちゃんでいっぱいのこの部屋から一生出たくない。


困らせちゃいけないよね。
でもまだ一緒にいたい。
これの堂々巡りでがんじがらめになる。
仕方なくドアノブに手を掛けた。

「ねぇ、翔ちゃ……」

「あぁもうダメだ、知らね」


手首を掴まれて、振り向き様に言葉ごと唇を塞がれた。


台詞とは裏腹の甘くて優しいもの。
なんだろう、これ。
そっか、これはきっと、翔ちゃんとの両想いのしるし。


「だから言ったろ、大事なもの近くに置くと俺ダメなんだって」


ドキドキ。
ドキドキが止まらない。
息ってどうやってするんだっけ?


「……ねぇ、これ現実?」

「自分でちゃんと確認しろ、ほら」


目を見て、確かめるように。
もっかい、優しいキス。


翔ちゃんが照れて笑ったから嬉しくて、もう絶対離さないつもりで思い切り抱きついた。