「聞いて?」

「う、うん」

ドキドキが、止まない。
いつものお説教じゃ、なさそうで。


「俺わかったんだ。ずっと美緒を避けてた理由」


ぎゅっと少しだけ強く抱きしめられて、息が止まる。今何が起こっているのか、一瞬わからなくなる。


「中学の頃、すげーいい加減だったから、おまえが俺の幼なじみだってのが周りにバレてあいつらにちょっかい出されるのがすげー嫌だったんだ」


何も言えなくなる。
耳に当たる翔ちゃんの頬が熱い。


「でも高校生になっても美緒は全然変わってなくて。あぶなっかしくてハラハラさせられてばっかで。
世話焼くしかねーやって思ってたけどそんなのは言い訳で」


そこで、ちいさなため息をひとつついた。

「今抱きしめて思った。もうムリ、限界」

こわごわと、翔ちゃんの顔を見た。
優しい眼差しに、全身を包まれている感じがする。

「無理って、限界ってなに?」

「だからそれは……」

翔ちゃんは耳元で優しくてつぶやいて、またぎゅっと私を抱きしめた。

「美緒のことが好き」

「ふぇっ?」

「すげー好き」

のぼせちゃってついに幻聴が聴こえ始めたみたいだ。

「大事すぎて、手なんか出せなかったんだ」

翔ちゃんが小さく息を吐く。
彼の緊張がこっちに伝わってくる。

「幼なじみなんかやめてもう俺の彼女になれよ」

「う……うん」

私は素直に頷いた。
夢ならば、醒めないで。

だってこれってさ
もしかして、両想いっていうんじゃないのかな。