「実日子さんファンだったんですね」
「うん、デビューの頃からずっと。翔にも何冊か読ませたよ。うなされてたけど」
「翔ちゃんが少女漫画を?」
眉間にシワを寄せて読んでる姿がパッと浮かんで吹き出しそうになってしまった。
「そういえばこの漫画家さん活動休止するって噂ありましたよね」
「それね、ほんともうヒヤヒヤだったの。今の連載も続きがすごく気になるし」
実日子さんの話では、その噂を絶ち切って精力的に活動を再開すると最近公式ホームページで彼女からのメッセージがあったらしい。
「ちぇりこ先生きっとリアルで何か踏ん切りがついたんだと思う」
「踏ん切りって?」
「つまり結婚したとか。孫が生まれたとか?」
熱量多めに話し出す顔がもう上気してる。
「詳しくはわからないけど、とにかくそういうのが創作意欲に繋がったんじゃないかなって思うの」
実日子さんは楽しそう。
ほんとにほんとに、彼女の漫画が好きなんだ。
「新連載の新しいやつもう読んだ?よかったら読む?」
その愛がビリビリと伝わってくる。彼女は新刊号もしっかり鞄の中に温めていた。
「今回のキャラもビジュアル最強なんだよねぇ。ルカ君みたいな完璧王子がふらっと現れないかな?学食でカツカレー食べてるとこに遭遇したーい!」
表紙の美男美女に見とれてる実日子さんの目は乙女の輝きキラッキラ。



