それからの帰り道、私はひたすら無言だった。


「強引に引っ張ってきたけど、謝るつもりないから」


何を言われても、無言を貫いてやるもんね。


「話したかったんだよ昨日のこと。なんかあったんだろ?」


そんなこと聞かれても答えなんか持ち合わせてない。


「俺……なんかした?変だった?」


したけど言えるか!
乙女の口からあんなことやこんなこと、言えるかー!思わず翔ちゃんを睨み返してしまった。


「なんか怒らせるようなことしたんだ」

「ううん、違う」


それだけは訂正しないと。
だっておでこに触れて手まで握って、これでおあいこにしようって決めたのは私の方。だから翔ちゃんに非はない。


「怒ってないよ。ドローだもん」

「ドロー?勝負挑んだとか……まさかプロレス技……」

「気にしなくていいよ」


あぁ、あれがプロレスごっこだったらよかったのに。


「逆に気になるだろ、最近ずっとおかしいし、変だぞ」


変にもなるよ。
好きな人にあんなことされて、それなのに翔ちゃんはなんにも覚えてなくて。


華世ちゃんはふたりで話しな、って言ってくれたけど何をどうやって話せばいいの?