「平澤さんはさ……好きな人、いるの?」


見上げていた空に、少し晴れ間が見えたとき、岡崎君にそう聞かれた。
その微かな陽射しで、雨が絹糸みたいな線を描いた。


「岡崎君はいるんだね」


なんとなく、そんな気がした。


「うん、いるよずっと。仕事柄なのか惚れっぽいのかも」


「恋って接客とかに役立つの?
いいなぁ、バイトしてみたい〜」


呑気な口ぶりだったからか、岡崎君にくすくすと笑われてしまった。


「役立つかはわかんない、でも働いてることは秘密にしといて」

「てことは……もしかして夜のお仕事?」

まさかホスト!?

「まぁ、夜は遅いかな」


やっぱり!
オラオラギラギラ系じゃなく、ほんわか癒し系ホストって需要ありそう。


「わかった。秘密は守るよ」


岡崎君みたいな子が夜のバイトをしてるなら、それなりの理由があるに違いない。

「ありがと。でもそのせいで成績が散々でさ」

そういえば彼はいつも居残り組にいるな。

「大丈夫だよ、わたしなんてやること特にないのにテストはいつも散々だもん」

「うん、それは知ってる」

「岡崎君……」

「なに?」

「君ってなかなかはっきりモノを言うタイプなんだね」


そう言ったら彼は楽しそうに笑った。