本屋さんの小さな庇の下で、並んで雨足が弱くなるのを待った。
空を見上げると
淡いグレーの雲が掃かれるみたいに流れてた。
「相合い傘と雨宿り、どっちが好き?」
「わぁ、そんな質問初めてされたかも」
突然聞かれて驚いたけど、岡崎君はなんだか柔らかい。
背もそこまであるわけじゃないから、男の子と話すときの威圧感みたいなものも感じないし、茶色の髪はメレンゲみたいにふわふわ。華奢で色白でどこか中性的なんだ。
普段から言動もほんわかしていて、彼のトゲとかカドを私は見たことがなかった。
だからその言葉もごくごく自然で、紅茶にミルクが注がれるみたいにするりとこの場に馴染んでしまった。
「岡崎君てロマンチストなんだね」
素直な感想を口にしたら、岡崎君は顔を赤くした。
「おかしい?」
「いや、全然。でも難しい質問だね。だってどっちもいいもんね。好きな人とならなおさら」
そう答えて翔ちゃんを思い浮かべる。
体調は、回復してるかな。
熱はまだあるのかな。
ご飯食べられたかな。



