「大丈夫だから、もう俺に構うなって」
掴まれた腕をほどいた。
ごめんな、今までだってほんとはちゃんと心折れてたよな。
充分傷ついてたはずだし、傷つけたってわかってた。
わかってたけど。
今からまた、君を傷つけます。
「彼女でもないのに、そういうのやめてくれる?」
深く息を吐いた。
「好きでもないやつと付き合うことはないから」
瞬きもせずに俺を見ていた奥寺の目から、すとんと涙が落ちた。
「みんなの誤解もちゃんと解いた方がいい」
彼女はそのまま教室から飛び出してしまった。
教室中がざわついてる。
公開失恋のせいだ。
予鈴が鳴っても奥寺は帰ってこなかった。
最低だよな、俺。
こんな時でも、美緒の涙の理由が気になって仕方ないんだから。



