奥寺の顔がすぐ目の前にあったけど
なんかすごく冷静だった。
そうかこれか。
美緒が嫌がった香りって。
「うそぉ!」
「キャ━ッ!」
女子たちの興奮した悲鳴がやけに遠くのほうで響く。
なんか意識がぼんやりする。
熱上がってきたのかなぁ。
高熱のせいで顔を真っ赤にして、呼吸も浅くて荒くて。
苦しそうだった昨日の美緒を思い出す。
あの涙が気になって仕方ない。
見慣れてきたはずの泣き顔が、胸にひっかかったままどうしても取れない。
もう学校に来てるかな。
ぶり返してなきゃいいけど。
いつもどおり笑ってるといいけど。



