溺愛フレグランス



家の前まで着くと、リビングの窓から明るい光が漏れている。
朔太郎が居ると確信した私は、慌てて車を駐車場に停めて裏口から家の中に入った。

「ただいま」

リビングは陽気な空気で満ち溢れていた。
お父さんもお母さんも何がそんな可笑しいのか、二人で楽しそうに笑っている。
そして、その二人の視線の先には、朔太郎とモフ男がいた。

「どうしたの? 何がそんなに可笑しいの? 私にも教えて」

朔太郎ってそういう奴。
子供の頃から我が家に幸せな笑いをプレゼントしてくれる。

「もうね、朔ちゃんが…」

お母さんはそこまでしか言えない。何かを思い出して涙を流して笑っている。

「晴美の子どもの頃の話をしてたんだよ。
それもモノマネ付きで」

私はすぐに何の話か分かった。
その話なら聞きたくない。そのモノマネだって、散々朔太郎に見せられたから。

「またその話? もう、その話ならいらない。
あ、お母さん、何か食べる物ある?」

コーヒーしか飲んでいない私は、家に帰り着いた途端、お腹が空き始めた。

「晴美ちゃんの分は冷蔵庫に入れてあるから、レンジでチンして食べて。
お母さんとお父さんはもう寝室に行くから。
朔ちゃん、もうちょっとだけ晴美に付き合ってあげてね。
ここでゆっくりしていいから」
「了解しました」

朔太郎は自分の家のようにくつろいでいる。