溺愛フレグランス



抱きしめられているせいか、それ以上の事が言えなかった。
幼なじみ以上の感情がどういうものなのか、今、探り始めた私には、まだどう答えていいのか分からない。

友和さんはゆっくりと私の体を元に戻す。
そして、切なさを漂わせて私の目をジッと見た。

「土曜日にまた会いに来ていい?
朝から出かけよう。
この間の待ち合わせの場所に、また迎えに来るから」

友和さんは私の手を握りしめながら、運転席に乗せてくれた。
そして、歩道まで移動して、私の車を誘導してくれる。
コインパーキングの緑色の看板の明かりが夜の闇を優しく照らし、友和さんのシルエットをぼんやりと浮かび上がらせる。
大人になった私には、このときめきだけで十分なのかもしれない。
私の車が見えなくなるまで手を振ってくれる友和さんをバックミラー越しに見ながら、私は胸の奥が痛くなった。
朔太郎の存在が、私の中でどう変わってしまうのか怖くてたまらない。
朔太郎が今までのように幼なじみのままでいてくれたら、私は友和さんと真っ新な気持ちでつき合えるのに。
でも、私の後ろ向きな思いとは裏腹に、車はスピードを上げる。
朔太郎がまだ家に居るかもしれない、そんな事を考えると車は加速を止めなかった。