「ありがとうございます」
私は心の底からホッとした。
友和さんに抱いていた疑念はただの勘違いだった。
温かいモカを口に含み、もう一度、友和さんの顔をじっくり見る。
朔太郎にはない大人の落ち着きを感じさせる雰囲気に、私はやっぱり惹かれてしまう。
それから一時間近く、また楽しいひと時を過ごした。
もし、朔太郎が近くに居なかったら、私はきっと友和さんに溺れてしまったかもしれない。
「晴美さん、これ、どうぞ」
友和さんはテーブルの下に隠していた紙袋からバラの花束を取り出した。
シンプルに真っ赤なバラの花束で、光沢のある白い包装紙にくるまれている。
「何かプレゼントしたいって思って…
ごめん、こんな事までしても晴美さんの気をひきたかった…」
花束をもらった事よりも、私は友和さんの甘い言葉に酔いしれる。
「あ、ありがとう…」
友和さんは私の目をジッと見つめる。
「また、会いに来ていい?」
友和さんの大きな右手が私の左手を包み込む。
そんな舞い上がりそうになる私の心に朔太郎の顔が浮かんできた。
私が友和さんと本気で結婚したいなんて言ったら、朔太郎は泣いてしまうかもしれない。
そんな朔太郎の存在は、私の心を締め付ける。
「今度は私が会いに行きます…
こんな遠くまできてもらうのは悪いから」
そんな事を言うのが精一杯だった。



