溺愛フレグランス



「ご、ごめんなさい、友和さん、今、立て込んでて、また後から電話してもいいですか?」

友和さんは、しばらく黙っていた。
そして、やっと小さな声で分かったと言ってくれた。でも、その時の友和さんの声は聞いた事がないような冷たい声だった。

「ごめんなさい… じゃ、後で…」

私は通話が切れた事を確かめると、朔太郎を睨んだ。
いたずらにしては大人げない。

「朔、こんな意地悪、もう二度としないで。
朔にとっては、馬鹿みたいな恋愛ごっこに見えるかもしれないけど、私は必死なの。
だから、邪魔しないで…」

私の切実な思いが朔太郎に届いてほしい。
でも、朔太郎はまた私の隣に寝転んで、天井を見つめる。よく知っている私の部屋に、幼い頃の面影を探しているように。

「そんな必死になるなよ…
結婚ってそんな必死になるもんじゃないって、俺は思うけど。
最後には俺がもらってやるからさ、必死にならなくてもいいよ。
俺は全然ありだと思うけど」

朔太郎はそう言い終わると、起き上がって真剣に私の顔を見る。手には私の枕を抱えたまま。