溺愛フレグランス



朔太郎はすぐに電話に出た。
そして、出た途端、「玄関の鍵を開けといて」とだけ言って電話を切る。
昔はよくこういう事はあった。お互い悩みを打ち明ける時とか、落ち込んで慰めてもらいたい時とか、そんな時、朔太郎がそっと家へ来た。
無駄に大きな我が家は、玄関のすぐそばに二階へ上がる階段がある。もちろん、私の部屋は二階にあって、両親の部屋はその反対側の一階にあった。
リビングに誰もいなくなれば、よほどの事がない限り、二人に気付かれる事はない。
私自身、あまり気持ちは乗らなかったけれど、言われた通りに玄関の鍵を開けた。
両親はもう寝室に入っている。
そして、私が自分の部屋でくつろいでいると、朔太郎が当たり前のようにやって来た。

「あ~、緊張した…」

何だか朔太郎の顔は楽しそうだ。
ウキウキワクワクの高揚感を隠しきれていない。
もう、こっちは気分が重たいっていうのに。

「朔、今日はごめんね…
モフ男をあんなふうに預けたりして」
「モフのあんな状態、初めて見たよ。
普段はおっとりで大人しいのに、今日はすごく興奮してた。それも悪い意味で」

朔太郎の何気ない言葉は、私の心に突き刺さる。それも痛みを伴って。