溺愛フレグランス



「ただいま」

私は家に帰り着くまで、朔太郎の事はすっかり忘れていた。
モフ男に出迎えられて、私はあの時の朔太郎の渋い顔を思い出す。

「晴美ちゃん、朔ちゃんが帰ってきたら電話ちょうだいって言ってたわよ。
朔ちゃん、今日もモフを散歩に連れて行ってくれて、だから、晴美ちゃんはいなかったけど、夕飯をご馳走したの。お礼も兼ねて」
「そうだったんだ…」

朔太郎はきっと怒っているに違いない。
モフ男の事をほったらかしにしてこんな遅くに帰ってきたのだから。

「モフ、今日はごめんね…」

私はモフ男を抱きしめて背中をさすった。
モフ男自身は何も怒っていないし寂しがってもいない。
それは朔太郎がたくさん楽しませてくれたから。本当の犬好きは朔太郎なのかもしれない。私や友和さんなんかより、ずっと動物の気持ちに寄り添っている。

友和さんとのデートは本当に楽しかった。
できるのなら一晩中その余韻に浸っていたいけれど、でも、朔太郎に電話をしなければならない。私は自分の部屋へ籠ると、スマホを手に取った。

「もしもし…」