溺愛フレグランス



「初めまして… 安村晴美です。
きょ、今日は天気が良くてよかったですね…」

イメージが違い過ぎるせいか、一気に緊張してしまう。
私はしどろもどろでそんな事しか言えなかった。

「モフ男君、こんにちは」

友和さんはそう言いながら、モフ男の頭を撫でた。
普段はそんな事はしないのに、モフ男は歯を見せて友和さんを威嚇する。
私はモフ男の頭を抱き寄せて、大丈夫だよと必死に言い聞かせた。

「ごめんなさい…
モフ男ったら、緊張してるみたい…
あ、友和さんのとこのキャンディちゃんは?」

友和さんはトイプードルのキャンディちゃんを飼っている。
友和さんの話によれば、三歳の女の子で小柄で大人しいらしい。

「車の中で待ってるのかな?」

私はスモークのかかった後部座席の窓を覗いて見た。

「ごめん、今日、キャンディは連れて来なかったんだ。
朝から機嫌が悪くてあんまりいい子じゃなかったから。
最近、体調があんまりよくなくて、それでだと思うけど。
だから、今日はモフ男君と楽しもうと思って。
でも、まだ、心を許してもらえてないかな…」

私は全てが想定外で何も言葉が出てこない。
おりこうさんじゃなかったからキャンディは連れて来なかった?
具合が悪いのに?
その冷たい言葉はワンコを愛する人間には恐ろしく聞こえてしまう。
私が敏感すぎるだけかもしれないけれど。