溺愛フレグランス



五時半頃に家に帰り着くと、モフ男はまだ帰って来ていなかった。
朔太郎の車に乗ってドッグランがある河原まで行ったと、お母さんが教えてくれた。
でも、もう外は暗くなってきたし、私は心配になり外に出て朔太郎の車を待った。しばらく待っていると、朔太郎の黒のワゴンが家の前で停まった。

「モフ男、晴美が帰ってきてるぞ~」

後部座席で車用のケージに乗せられたモフ男に向かって、朔太郎は楽しそうにそう言う。
モフ男は嬉しくてケージの中で飛び跳ねている。
私はそれよりも、モフ男が車用のケージに乗っている姿に涙がこみ上げた。
お父さんが元気な頃は、よく車にモフ男を乗せて家族で色々な場所へ出かけた。
でも、お父さんが倒れて以来、このケージの出番はなくなり、私自身、どこにしまったのかも知らなかった。

「このケージが懐かしくて…」

私がウルウルしていると、朔太郎は後部座席のドアを開けた。

「ほら、乗って。
モフ男もまだドライブをしていたそうだし、今からもうちょっとだけ車を走らせようか?」

私はすぐに車に乗り込んだ。
そして、ケージの中にいるモフ男をこちょこちょ撫でまくる。