溺愛フレグランス



「晴美ちゃん、ちょっといい?」

私が仕事に戻ると、早速村井さんに声をかけられる。
たまたまパソコンの入力をしている場所には、私以外誰もいなかった。

「ねえ、幼なじみ君を交えて、近々、食事しようよ」

村井さんは見た目は綺麗な四十四歳の女性なのに、いまだに独身だ。
でも、一緒に仕事をしていれば、その理由は何となく分かる。
村井さんは超が付くほどの潔癖症だった。普通の感覚の人間でさえ拒否されるくらいに。

「村井さん…
朔太郎は見た目は可愛らしくてさわやかに見えるけど、性格は相当なズボラな男なんです。
多分、村井さんが一瞬で嫌いになる要素をたくさん持ってると思う」

私はとにかく余計なストレスを増やしたくなかった。
村井さんの事は嫌いじゃないけれど、今は自分の恋の成就だけに専念したい。

「あら、そうなの…
でも、それは自分で確認しなきゃ分かんないじゃない?
近々、皆のスケジュールを合わせましょう、ね」

私は小さな声ではいと言った。
一気に疲れが出て、思わずため息をつく
村井さんが居なくなりまた一人で入力に取り組んでいると、今度は大好きな由良ちゃんがPC室に入ってきた。