一向にキスをやめない朔太郎のくちびるを噛みながら、私はそう聞いた。
「…忘れた」
朔太郎はそう言うと、今度は私の胸に顔を埋める。
「今日は晴美のベッドで一緒に寝ようかな…
晴美の匂いに包まれてずっと寝ていたい。
子供の頃は、よく晴美の家に泊ってたじゃん。
大人になった俺はダメかな… 大丈夫な気がするんだけど」
「無理!」
私は一言そう言うと、朔太郎をもう一度助手席に座らせる。
「でも、ドライブは大丈夫だろ?」
私は子供を諭すような目で朔太郎を見つめた。
「無理だよ…
だって、毎朝、早起きしてモフ男の散歩にも行かなきゃならないんだよ。
これ以上遅くなったら、早起きできない。
散歩を待ちわびてるモフ男を裏切る事になる。
だから、もう帰らなきゃ…」
「モフ男は、俺が散歩に連れて行くよ。
午前中に連れて行けばいいだろ?
モフ男は俺の事大好きだし、なんならちょっと離れたドッグランまで連れて行ってもいいし」
「本当に?」
確かに、モフ男は、昔は朔太郎の事が大好きだった。
私が二十歳の時、大学からの帰り道、とあるペットショップで一目ぼれをしたモフ男。
我が家に初めて迎えたペットだった。
まだ実家にいた朔太郎も、めちゃくちゃ可愛がってくれた。
私が留守の時だって、モフ男会いたさに朔太郎がよく散歩に連れていったほど。



