「晴美の車は最高だよ。晴美のいい匂いが充満してるから」
「また匂いの話?」
私はそう言いながら、車のエンジンをかけた。
「ねえ、晴美、ちょっとドライブしようよ」
「ドライブ?」
私は驚いて、かけていたエンジンを一度切った。
「無理だよ。
だって、私、明日普通に仕事がある日なんだから。
朔は? 朔も仕事でしょ?」
朔太郎は嬉しそうに首を横に振った。
「俺の職場は、今、使えない状態だって知ってるだろ?
こんなコロナ禍だし、他の皆も在宅で仕事をしてる。
だから、俺は、別に時間に制限はないんだけどな」
私は無理無理と言いながらもう一度エンジンをかけようとすると、朔太郎がおもむろに私に抱きついてきた。
「もう、朔、酔っぱらい過ぎだよ…」
私がそう言いながら朔太郎の腕を引きはがそうとすると、朔太郎は更に力強く私を抱きしめる。
「…晴美、久しぶりにキスしよ?」
その質問に答えようとする私のくちびるを、朔太郎のくちびるは一瞬で塞いでしまう。
それはお酒くさいキスだった。
でも、最後に頬張った苺の甘みが、その後、すぐに私の口の中に広がってくる。
やっぱり、朔太郎のキスは甘くなる。
私達は、この人生の中、何回かくちびるを重ね合った。
バレンタインのチョコのお返しとか言って口にチョコをいっぱい頬張ったままのキスや、お祭りの帰り、りんご飴を食べながら花火の上がる夜空を見上げて交わしたキスや、朔太郎とのキスの思い出はほとんどが甘ったるいキスの味。
「…朔、苺、どんだけ食べたの?」



