朔太郎は、誰よりも早くお父さんの車椅子の介助に行く。
これもいつもの事。
私とお母さんが動き出す前に、朔太郎はお父さんに寄り添ってくれる。
そして、お父さんと奥の部屋でくつろいでいたモフ男が、朔太郎の気配を感じ小走りでリビングへ入って来た。
「朔ちゃんはコーヒーがいい? それともジュース?」
「コーヒーでお願いします」
朔太郎はモフ男をもみくちゃに撫でながら、お母さんにそう返事をした。
朔太郎が頻繁に我が家へ遊びに来ている事がよく分かる。
お父さんもお母さんもモフ男もずっと笑顔だから。
それからしばらくは他愛もない会話を楽しんだ。
すると、スーツの上着を中々脱がない朔太郎を心配したお母さんが、朔太郎にこう聞いた。
「朔ちゃん、上着脱がないの?
脱いだ方が楽でしょ?
今、ハンガー持って来るから、ね?」
「あ、おばちゃん、いいんです。
ちょっと、ここに座ってもらえますか?」
急に敬語になった朔太郎を見て、お母さんはクスクス笑う。
そりゃ、笑いたくもなる。私だって、笑うのを我慢しているから。
お父さんとお母さんを前にした朔太郎は、ソファから下りると二人の前に正座をした。
「え? 朔?」
こんな昭和的なシチュエーションは想定外だった。
お父さんもお母さんも目を丸くして驚いている。



