「晴美も腹が減ったんじゃない?
これ、食べる?」

早朝の朔太郎も、昼も夜も、朔太郎はいつでもイケメンで爽やかだ。
あたりめを食べていようがピーナッツを頬張っていようが、それは全く関係ない。
私はそんな朔太郎を見つめ、いい意味でため息をついた。
手のひらにのせられたピーナッツを大きな口を開けて食べる。
うん、これも幼なじみの特権だ。

そして、洞窟に寄せては返す波の音が、陽が高くなるにつれ大きく聞こえる。
さっきまで湖のようだった海の様子も、今は朝の冷たい風に乗って小さな波が立ち始めた。
あのひと時の奇跡としか思えない朝日を見られた事が、今では夢のように感じる。
だから、この奇跡の日に免じて、贈り物をしない人間がこういう肝心な時にへまをする事だって、私は寛大に受け入れる。
兎にも角にも、私は朔太郎の全てを愛している。

「朔太郎、まだ、私の返事を聞いてないけどいいの?」
「いいよ」

朔太郎はミネラルウォーターを一気に飲み干した。

「俺がプロポーズした時に、晴美の匂いが一瞬変わったんだ」
「匂い??」

また朔太郎がモフ男の仲間になる。

「一瞬、最高の匂いになった。
匂いっていうより、フレグランスって言った方がピッタリなくらいの芳醇な香り。
それが答えだって分かったよ。
私も朔太郎と結婚したいの、ってちゃんと訴えてた」