朔太郎の背中を通じて響いてくる朔太郎の聞き慣れた声に、私の心も体も安らいでいく。
大げさに言えば、頭の痛みも和らいでいる気がする。
光のない夜の闇に、朔太郎の持つ携帯用ライトの灯りが砂浜と灰色の海を照らし出す。
私はぼんやりとその美しい光景を見ていた。
頬を撫でるひんやりとした海風と、朔太郎の背中から伝わる心地よい温もり、そして、耳に残る穏やかな波の音。
夜の海をジッと見ていると、私達は壮大な自然の中のちっぽけな存在だという事を改めて認識する。
そんな地球上で、私は、今、朔太郎とこの海辺を歩いている。
朔太郎の息遣いを聞きながら、私は、朔太郎と一緒に歩んできた自分の人生を思い起こす。
朔太郎が隣に居るのが当たり前だった、私のこれまでの人生。
私は朔太郎の背中に頬を摺り寄せた。
朔太郎じゃなきゃ嫌だ…
私は朔太郎と結婚して、これからの人生を一緒に過ごしていきたい。
そんな事を思いながら、うとうと眠りについた。
「晴美、起きて。
もうそろそろ目を覚まさないと、ここに来た意味がなくなるぞ」
私はどれくらい寝ていたのだろう。
朔太郎の声に気持ちよく目が覚めた。



