溺愛フレグランス



朔太郎は智也お手製のロコモコを何も気にせずに頬張っている。
過去の話なんて全然興味がないみたいに。

「美憂ちゃんは、モデルさんみたいに全てが完璧だった。
身長も170㎝くらいあって、顔がこりすみたいに小さくて、とにかくオーラが半端ない。聞いたら、学生の時、読者モデルをやってたって。
それくらい、綺麗だって事」

智也は朔太郎を横目で見ながら、美憂ちゃんを褒めまくった。
朔太郎の幼なじみでしかない私まで、テンションが下がるくらいに。

「ふ~ん、そうなんだ…」

智也はちょっとだけ凹んでいる私の前にも、ロコモコを持ってきた。

「でも、俺は、そんな美憂ちゃんとまともに話せなかった。
あんまりキラキラし過ぎてて、何か自分らしさが出せなくて。
可愛いとか綺麗とかそんなんじゃなくて、ちょっと近寄りがたいみたいな感じかな」

智也は肩をすくめて笑った。
何も言わない朔太郎を横目で見ながら。
私はそれほど綺麗な朔太郎の元奥さんを知らないでよかったのかもしれない。
ただの幼なじみのはずなのに、もし、その時そんなシチュエーションに出くわしたら、絶対に悲しい気持ちになっていた。自分の立ち位置も分からないまま、訳の分からない敗北感に立ち直れなかったに違いない。