溺愛フレグランス



「頭が痛いのか?」
「うん…」
「もうちょっと多めに水を飲まなきゃダメだよ」

朔太郎はそう言うと、持っていたリュックを前に担いで私に背中を向けた。

「ほら、ここに乗って」
「え~、大丈夫だよ、歩けるよ~」

朔太郎はそれでもそこを動かない。

「晴美がのそのそ歩いて太陽が昇ってきたら、俺、泣くからな。
それは絶対に嫌だから、俺がおぶって歩いた方がいい。
それにおんぶするのって、初めての事じゃないだろ?」

そう、確かに初めてじゃない。
それは八歳の頃、かけっこをして遊んでいたら、ドジな私は思いっきり転んでしまった。膝をすりむいて真っ赤な血が出て、大泣きする私を朔太郎は家までおぶって帰ってくれた。

「あれは子供の頃の話だよ。
それも家のすぐ近くで遊んでたあの話でしょ?」

朔太郎は笑いながら、私に背中を押し付ける。早く乗れ!と言わんばかりに。
私は、渋々、朔太郎の背中に乗った。
軽々と私を背負う朔太郎は、もう小さな少年じゃない。
筋肉に覆われたたくましい背中は、私の体をしっかりと支えてくれる。

「ちょっと急いで歩くから。
眠かったら寝てもいいぞ」